論点特集
改正行政書士法の解説とこれからの行政書士業務(2)
戸口 勤
なぜ代理なのか=(第1条の3第1号の代理)
 ここで、代理と代行の意味を再確認したい。本号の代理は、民民代理の本条第2号との代理とは少し概念を異にし、純然たる公法上の代理(行政機関から行政機関に対する委任等による代理)とも概念を異にし別に論じなければならない。本号の代理は、行政庁に対して申請人が何かの利益、効果等を求める為の代理である。ここに意思表示の合致は見られないが、法行為である事に変わりが無い。しかし、私法である民法上の代理理論をそのまま公法上の代理制度に適用する事はできないのは勿論だが、法行為を本人に代わって行う観点においては類似性が見られる。
 本号の代理は、行政手続上の代理であるので準公法上の代理とも考えられるが、申請人である本人の申請意思に基づき行政書士が代理人として「提出手続代理」行為を行なう点で民法上の代理の法理論を一部的に類推適用でき得ると解釈する。
 従って、代理とは、代理人の法行為によって、本人が直接にその法律効果を取得する事であるとここでは一応に定義する。それに対して、代行とは、事実行為を本人に代わって行なう事であり、代行者(使者)は、本人に本人に代わって法行為や意思表示を行なうことができない。
 最応に広く表現をすれば、代理と代行は、法行為(以下法律行為を含む)を本人に代わって行なうか、事実行為を本人に代わって行なうかの相違である。
 法行為を本人に代わって行なう事を業をする者を法律家と言う。従って、改正前の行政書士法には、代理の規定が無いので、厳密に言えば行政書士は法律家とは言えなかった事になる。行政書士は、改正行政書士法が成立し明年7月1日の施行によって、初めて法律家として、国家から認知を受けたと言えるのである。
 本号の代理は、「意思代理ではなく事実行為の代理である」との説もあるが、「事実行為の代理」と言う概念は法解釈上で疑問が残る。代理と代行の概念的区別が不明確になるからである。
 提出手続代理行為は「事実行為」ではなく申請に関する意思表示の一種(受理、許可等の効果を求める一方行為)と解するのが相当であろう。いずれ総務省の解説があるのでそれを待ちたい。
実務上から見た代理
 では、「提出手続代理」と「手続代理」との相違はどうであろうか。「・・提出・・」と限定している前者の方が後者より狭い概念と言えるが、日々の業務においてはまったく同一と解しても間違いではない。この1号の代理業務のみでは、字句の訂正、補正は行ない得るが、提出書類の内容変更まではする事が出来ない。ただし、第1条の2の書類作成業務について、依頼者から「一式包括作成委任」を受任すれば提出書類の内容変更までをすることが出来ると解することが出来る。
 従って、書類作成業務と提出手続代理業務とを同時に委任を受け依頼されるのが通常なので、その二つの業務を受任する事によって、「提出手続代理」が結果的には「手続代理」と同一の業務になりまったく差異が無くなる。改正行政書士法も、この事を前提とし「・・提出する手続きを代理する」と規定したと解する事が出来る。法案作成にあたっての日行連、日政連の未来を見据えた努力がうかがえる。
 「提出手続代理業務」には罰則規定がないので誰でも提出するだけであるのなら行なうことができる。但し、報酬を得て書類作成を行えば行政書士法違反である。「提出代理業務」を報酬を得て、「書類作成業務」を無報酬で行ったらどうであろうか。脱法行為として、当然行政書士法違反になる。次回は、弁護士法との関係、民民代理について論及したい。